↑これまでの10ヶ月をまとめた動画です。
あらすじ
2021年5月31日にエンセファリトゾーン症(Ez)を発症したうさぎのごんた。体重増加を期待した食餌療法、動作改善のためのリハビリを行なっていた。同年10月Ezが再発、投薬治療を開始。薬は飲み切るも、違和感は継続してみられた。しかし、大きな改善が認められないため、薬の継続投与はしないことにした。これからも再発の可能性があるなかで、ごんたを幸せにしたいと強く決意した。
10ヶ月のまとめ
2021年12月1日〜3月31日まで様々なリハビリを行なった。今まで通り、起き上がる練習や走る練習、ジャンプする練習。なるべく動いてもらうためにスペシャルなおやつやおもちゃを用意した。体重は1500gをキープしていたが、年明けくらいから徐々に落ち始め、1300g後半〜1400g前半にまた戻ってきていた。こうたと同じ量のごはんでは体重すらキープできない。
ある日、ごんたがくしゃみをし始めて病院で薬をもらう。ある日、Ezの神経症状が悪化して薬をもらう。ある日、こうたの飲水量が600mlを超えてきてEz疑いで薬をもらう。そんな「ある日」を重ねる日々。ごんたとこうたはいつも一緒にいた。「一緒にいること」はEzがうつる可能性が大きい。ある論文で「Ezを発症したウサギの尿中から、一生涯に及んで菌が出続けた」というものを読んだ。私は発症数ヶ月でおさまる場合もあるし、一生涯出続ける場合もあるんだと思った。そもそも発症前から発症後まで、すぐに隔離しなかったので私にはどうでもいい内容だった。こうたが飼い主公認のEzキャリアになっただけだった。
病後、初のうさんぽへ
2022年3月30日。発症から10ヶ月間、辛い治療とリハビリを乗り越えて、公園へうさんぽできるまで回復した。まだ転んでしまうけど、家の中よりもふかふかした土の上で、気持ちいい風に吹かれて、美味しい草花の匂いの中で、ごんたはたくさん走った。そしてその傍らには常に応援してくれたこうたの姿。ごんたを守るようにごんたに寄り添い、周りを警戒してくれた。
ごんたとこうたは、初めて会った日から数年間にわたり殴り合いのケンカをした。
「特殊攻撃(スプレー)のごんた」「物理攻撃(噛みつき)のこうた」
私は毎日頭を抱えた。こうたをお迎えしなければいいと思った日もあった。しかし、いつしか2人は親友のように仲良くなり、楽しい時も辛い時も一緒に乗り越えてきた。ごんたが病気を発症してからも彼らの友情は変わらなかった。これほどまでに心強い相棒はいなかった。私もごんたもこうたの支えがあって頑張ってこれた。
今後について
私はこの日のごんたの反応を見て、うさんぽを続けるか辞めるかの判断しようと考えていた。
ごんたは目をキラキラさせて走って、転んで、起き上がり、草の匂いを嗅いで、食した。陽の光を浴びて嬉しそうに体を動かす。ごんたは外で走るのが好きなんだと思った。1人だと怖いかもしれない、その時はこうたも私もいる。ごんたのペースで、ごんたの感じたいように、ごんたの世界を広げてあげたい。飼い主のエゴや妄想だとしても私はそう思った。
後日談
2023年5月にもうさんぽに行った。だんだん暑くなってきて、今季のうさんぽはこれで終わりだなと思う。ごんたの体重は戻らない。神経症状も強く出る時もある。ごはんの食べが悪い日もある。動くのが嫌な時も、こうたと遊ぶのが楽しい日も、お腹がはち切れるまで食べたい日もあった。5月にはこうたの誕生日、6月にはごんたの誕生日。梅雨が明けて、夏が過ぎて、秋になったらもう一度うさんぽに行こうねって約束した。そして、秋が来て、来週くらいに気温が落ち着くねって、うさんぽに行けるかなって言ってた。うさんぽに行ったら、走るのもっと上手になるよって。そして、その言葉をかけた次の日の9月3日夜。ごんたは大発作を起こし、亡くなった。
さいごに
私がエンセファリトゾーン症にかかったごんたの動画や記事を公開しようと思ったのは、誰かのどこかのうさぎさんがこの病気になった時に少しでも役に立てたら、という思いからでした。エンセファリトゾーン症は中枢性、末梢性と分かれており、特に中枢性のものに関しては様々な症状が出ます。ごんたの場合は、末梢性に現れる斜頸や三半規管の異常よりも中枢性に現れる麻痺や失調の要素が大きく、臨床的に見て中枢性の、小脳由来のエンセファリトゾーン症だと思われました。私は中枢性のEzに関して本やネット、文献を調べまわりました。しかし、中枢性のEzの症状について書かれている記事や動画は少なく、末梢性のEzの内容が多かったように思います。
そのため、私の制作した記事や動画では、ごんたの症状、私の行なったごんたへの関わり方、得意分野であるリハビリの目線を取り入れた内容にしました。ごんたは最期に大発作で亡くなりましたが、実際には大発作だったのかどうかは分かりません。状況的にそうだったのではないか、と思われるだけです。もしかするとEzが生命を維持する最も大事な器官である延髄にまで及んでいたのかもしれません。
私はごんたの生前から、真実を知りたくてごんたが亡くなったら解剖に出そうと思っていました。しかし、いざ直面すると解剖はできませんでした。それは、ごんた自身のためではなく、私のための行為であると知っていたからです。ごんたは私のうさぎだけれど、ごんたの体はごんたのものでした。ごんたが本当に中枢性のEzだったのかはもう分かりません。どこまでEzに侵されていたのかも、本当にEzだったのかも、全て分かりません。ただ私が言えるのは、Ezに効果のある薬が効いたこと、ごんたの症状が中枢性のEzでみられる症状に当てはまっていること、Ezのような神経症状の再発が複数回みられたこと。臨床的症状のみです。それでも、この経験が役に立つのなら発信したいと思いました。
すべてのうさぎさんが幸せであるように、うさぎの医療がよりよく発展するように願いを込めています。
生前ごんたに関わりのあった人たち、うさぎさんたち、亡くなってからごんたが繋いでくれた人たち、うさぎさんたち、いつも応援していただきありがとうございました。勇気をもらえたと言ってもらえて私の方が勇気づけられました。ごんたの動画を見てたからすぐに発症に気づけたと言ってもらえて、動画を作ってよかったと心から思いました。動画では盛り込めなかった小さなことがたくさんあったことに気づいてもらって、文章に起こしてみて良かったと思いました。動画を作った時も苦しかったですが、ごんたがいなくなってから文章に起こす方が何倍も苦しかったです。未来のある日、もうEzは後遺症もなく治る時代だよ!と笑える日がくることを願っています。